「このまま働き続けるのはもう限界かもしれない……」
そう感じながらも、適応障害を理由に退職する際には大きな不安がつきものです。そして、実際に退職する際に特に気になるのは、退職後の生活費や失業保険が受け取れるのかといった、経済面での問題ではないでしょうか。
適応障害は、強いストレスにより心身のバランスが崩れてしまう病気であり、無理に働き続けるよりも、適切な治療と十分な休養が最優先です。そして、退職後は「いきなり無収入になるのでは」と不安に感じる方も多いかもしれませんが、条件を満たせば、適応障害でも失業保険を受給できる可能性があります。
本記事では、適応障害でこれから退職を考えている方に向けて、失業保険を上手に活用しながら、心身の回復と再就職の準備を進める5つのステップを詳しく解説します。
退職後の不安を少しでも軽くし、「再出発」の一歩を前向きに踏み出せるような情報をお届けします。
※適応障害の方が仕事とどう向き合えばよいのかについては、実際に精神科医の方が執筆した記事がありますので、そちらをご参考ください。

SETP1:自身の病気の状態(適応障害の進行度)を確認する(心身の回復に努める)
適応障害は、過度なストレスによって心身にさまざまな不調を来す病気ですが、同様な精神疾患として、「うつ病」や「不安障害」といったものがあります。
ご自身の病気の状態を正しく把握するために、まずは最寄りの精神科医等で診断を受けましょう。そして、心身の回復に努め、主治医と相談の上、後述する「失業保険」か「傷病手当金」のどちらの制度が自分に合っているのかを見極めていくことが、再出発の第一歩となります。
SETP2:失業保険か傷病手当金のどちらが利用できるかを確認する
適応障害で退職する際にまず確認すべきなのが、「失業保険」と「傷病手当金」のどちらの制度を利用できるかという点です。
この2つは、どちらも退職後の生活を支える制度ですが、同時に受け取ることはできず、受給にはそれぞれ明確な条件があります。
失業保険は、「働く意欲と能力があり、いつでも就職できる状態であること」が前提となる制度です。
適応障害で退職した場合でも、症状がある程度落ち着いており、主治医から“就労可能”と判断されれば、失業保険を受給することは可能です。
たとえば、以下のようなケースでは失業保険の受給対象になる可能性があります:
- すぐすぐでフルタイム勤務はできないが、短時間・軽作業などの再就職なら可能
- 医師から「働いても良い」という診断を受けた
- 就職活動に参加できる程度に心身が安定している
- 就労に向けたリワーク(職場復帰訓練)や就労支援施設の利用を始めている
このように、“今すぐ働ける状態”でなくても、段階的に就職を目指せる状態であれば、ハローワークにその旨を伝えることで失業保険の対象になることがあります。
実際の可否は医師の診断書や本人の状況によって異なるため、まずは主治医と相談のうえ、ハローワークでの説明を受けることが大切です。
一方、傷病手当金は、会社の健康保険に加入していた人が、病気や怪我で働けない状態にあるときに、収入の一部を補償する制度です。
適応障害などの精神疾患でも、医師が「就労困難」と判断すれば対象になります。特に、退職前にこの制度を使い始めておくことで、退職後も継続して受給できる可能性があるので、退職前に医師に確認してもらうことが大切です。
ただし、一般的に適応障害は一過性の精神疾患と判断されることが多く、「就労困難」と判断されるケースは極めて稀なので、注意が必要です。
選択の目安としては、適応障害の回復度合いを見て判断するのが良いでしょう。
- 就職活動がすぐに始められない状態 ⇒ 傷病手当金の検討を
- ある程度回復しており、就職活動を再開したい ⇒ 失業保険の検討を
まずは主治医と相談の上、「働ける状態なのか、それとも療養が必要な状態か」を確認することが重要です。
適切な制度を選ぶことで、経済的な不安を減らしながら、回復と再出発への準備を進められます。
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SETP3:失業保険の手続き、給付を受けながら仕事を安定させる
※ここからは、前提として失業保険(または傷病手当金)の受給資格がある方向けの内容となります。

適応障害で退職した後、失業保険の給付を受けられる状態にある方は、ハローワークでの手続きを通じて、生活の安定を図ることができます。
ここでは、申請の流れや必要書類、また「就職活動の意思あり」と認められるためのポイントを具体的に解説します。
ハローワークでの申請手順は以下の通りです。
- 最寄りのハローワークに出向き、失業保険受給(求職)の申し込みを行う
- 「雇用保険受給資格者のしおり」の説明を受ける
- 初回の失業認定日が指定される
- 所定の待機期間(原則7日)と給付制限期間(※自己都合退職の場合)を経て、失業保険の支給が開始される
大まかな流れとしては上記となりますが、詳細はハローワークにて案内されますので、まずは最寄りのハローワークに行き、失業保険受給申請を行いましょう。
申請に必要な主な書類は以下の通りです:
- 雇用保険被保険者離職票(1・2)
- マイナンバーカードまたは本人確認書類
- 写真(証明写真)※マイナンバーカードがあればなくてもOK
- (必要に応じて)印鑑・通帳など
※医師の診断書は必須ではありませんが、ハローワークの職員に「現在の健康状態」や「再就職への意欲」を伝える際に、診断書のコピーを持参しておくと安心です。
適応障害の回復途中であっても、ハローワークでは「就職活動の意思があるかどうか」が問われます。
このとき、無理に「フルタイムで働けます」と言う必要はありません。以下のような伝え方が現実的です:
- 「短時間勤務や在宅勤務など、体調に合わせた働き方で再就職を考えています」
- 「就労移行支援やリワークプログラムを受けながら、少しずつ復職を目指したい」
- 「まずは仕事に慣れることを目標に、軽作業やパートから始めたいと考えています」
“働く意思があるが、体調に配慮が必要”という姿勢を正直に伝えることで、失業保険の受給資格を維持しながら、無理なく就職活動を進めることが可能です。
STEP4:無理のない範囲で自己分析・スキルの棚卸しをする
失業保険の給付を受けながら少しずつ体調が落ち着いてきたら、次の一歩に向けて“自分を見つめ直す時間”をつくってみましょう。
適応障害で退職した経験は、決してネガティブなものだけではありません。「自分にとって本当に合った働き方とは何か?」を見直す貴重な機会でもあります。
適応障害は、「環境とのミスマッチ」から心身に不調が現れる病気です。
職場の人間関係、過度な業務量、価値観の違いなど、その職場では自分らしく働けなかった理由がきっとあったはずです。
「なぜつらかったのか?」「どの瞬間に苦しくなったのか?」を振り返ることは、再就職先で同じような苦しみを繰り返さないためのヒントになります。
今後、働く上で適応障害にならないために、「自分にとってストレスの少ない働き方」は何かを考えましょう。
たとえば、次のようなものが当てはまればストレスの少ない働き方と言えると思います。(※これまで働いていた環境にも影響されますので、参考までにご確認ください。)
- 一人で集中できる仕事が合っている(在宅ワーク等)
- 対人関係の負荷が少ない職場がよい
- ペースを調整しながら働けるパートやフリーランスという選択肢
こうした”働き方の軸”を探ることで、「適応障害の再発を防ぎつつ働く」ための条件が少しずつ見えてきます。
失業保険を受け取れる期間を活用し、あせらずじっくり自己分析を進めましょう。
一人で考えるのが難しいと感じたら、就労移行支援事業所やハローワークのキャリアカウンセリングを利用するのも一つの方法です。
精神疾患のある方の就労に特化した支援を行う機関では、自己理解を深めながら、自分に合った仕事選びのサポートを受けることができます。
また、就労移行支援では職場体験やビジネスマナー講習、メンタル面のサポートを受けながら、再就職に向けたリズムづくりも可能です。
「もう一度働くのが不安…」という気持ちがあるのは当然です。
だからこそ、今のうちに“自分に合う働き方”を見つける準備をしておくことが、再発防止と安定した職場定着へのカギとなります。
STEP5:自分に合った働き方で再就職を目指す
自己分析やスキルの棚卸しを進めるうちに、「自分はどう働きたいのか」「どんな環境なら続けられるのか」が少しずつ見えてくるはずです。
適応障害を経験したからこそ気づけた“働き方の価値観”を大切にしながら、自分にとって無理のない就職活動をスタートしていきましょう。
再就職といっても、いきなり正社員やフルタイムで働く必要はありません。短時間勤務のパートやアルバイト、派遣や契約社員などの期間限定の仕事など、自分の体調や生活スタイルに合った働き方からスタートすることで、再発のリスクを抑えながら仕事の感覚を取り戻すことができます。
再就職に向けては、以下のような制度も活用できます。
- ハローワークの職業紹介・職業訓練(失業保険の受給を継続しながら利用可)
- トライアル雇用制度・社会人インターンシップ
- 障害者雇用制度(医師の診断書等により、配慮のある環境で働ける場合も)
これらの制度は、適応障害によって退職した方が安心して再出発するための協力なサポートになります。
適応障害を乗り越えての再就職は、まさに“リスタート”です。
失業保険を活用しながら、心身の安定、自己理解、スキル確認といった準備を重ねてきたからこそ、今のあなたには「以前とは違う、自分に合った選択肢を選ぶ力」があります。
大切なのは、「周りと同じでなくてもいい」「自分らしく働くことがいちばん」という視点です。
自分のペースを尊重し、焦らず一歩ずつ、再就職を目指していきましょう。
おわりに:適応障害からの再出発には「制度を理解し活用した準備期間」が不可欠
適応障害によって仕事を離れる決断は、非常に勇気のいることです。
しかし、退職は終わりではなく、あなた自身がこれから「安心して働ける環境」を探すためのスタート地点でもあります。
そのためにも、まずは【失業保険】や【傷病手当金】といった公的制度を正しく理解し、回復に専念しながら次の一歩を準備する時間をしっかり確保しましょう。
制度を理解し、うまく活用することで、金銭的・精神的な負担を軽くしながら、焦らず再出発の準備ができます。