雇用保険(失業保険)を受給する際に必ずチェックしなければならないのが、雇用保険法です。この雇用保険法により受給できる金額が変わってきます。
2024年の雇用保険法等改正では、雇用に関する環境の変化や社会的なニーズに対応するため、労働者保護と社会保障制度の強化を目的として行われました。
直近の法改正の施行日は、主に2025年4月1日に予定されていますが、制度ごとに若干差異があり、具体的な項目及び施行日は下記となります。
- 雇用保険の適用拡大(2028年10月1日施行)
- 教育訓練やリ・スキリング支援の充実(一部は2024年10月1日、2025年10月1日施行)
- 育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保(一部は2024年5月17日)
- 出生後休業支援給付の創設(2025年4月1日)
- 育児時短就業給付の創設(2025年4月1日)
特に失業保険制度に関連する改正は、多様化する雇用形態や労働市場の変動に対応するために、受給資格や給付内容に変更が加えられています。
本記事では、2024年の雇用保険法改正の主なポイントを解説し、それがどのように失業保険の受給に影響するのかを詳しく解説いたします。
※施行内容の全文を確認されたい方は、以下厚生労働省のHPをご確認ください。
1. 非正規雇用者への支援強化
まず、初めの制度変更ポイントとしては、非正規雇用者への支援強化です。昨今の日本の市場では、非正規雇用者の割合が増加しており、その中でも特にパートタイム労働者や契約社員、派遣労働者の増加が顕著です。
これに伴い、雇用保険の適用範囲が、より多くの非正規雇用者が失業保険の対象となるように変更されました。
2024年の制度改正の具体的なポイントは、一定の条件を満たす短時間労働者に対する給付の改善が行われ、雇用保険の適用基準が緩和されたことです。
これにより、今まで受給資格を得られなかった一部の労働者も失業保険を受け取ることができるようになります。
特にこれまで雇用保険に加入できなかった週の労働時間が20時間未満の労働者にも、一部で加入資格が拡大され、短時間労働でも失業給付を受ける道が開かれました。
これにより、パートタイム労働者やフリーランスといった多様な働き方をする人々に対する支援が強化され、労働市場の柔軟性を高めるとともに、社会的なセーフティーネットの強化が図られています。
2. 育児・介護休業中の給付金の拡充
育児休業や介護休業を取得する労働者への支援も2024年の改正で強化されています。
少子高齢化が進む日本では、育児や介護と仕事の両立が重要な課題となっており、この課題に対応するため、改正では育児休業給付金や介護休業給付金の給付率が引き上げられ、特に育児休業中の家計へのサポートが手厚くなりました。
具体的には、育児休業給付金の給付率は、休業開始後6か月までは賃金の67%が支給される現行制度から、最大で70%まで引き上げられました。
これにより、育児休業を取りやすくし、子育て中の家庭の経済的負担を軽減することが期待されています。
また、介護休業給付についても同様に支援が強化されており、家族の介護をしながら働き続けることが可能な環境整備が進められています。
3. 離職理由による給付条件の見直し
従来、失業保険の受給資格や給付期間は、離職の理由によって異なっていました。
特に自己都合退職の場合、受給資格が厳しく、給付開始までの待機期間が長く設定されていたため、当社MISVの無料相談のお電話でも、数多くのお問い合わせをいただいておりました。
しかし、2024年の改正では、自己都合退職者に対する給付の条件が一部緩和されました。
この改正により、自己都合退職であっても、特定の事情が認められる場合には、従来よりも早期に給付を受けられるようになっています。
例えば、パワハラやセクハラといった職場環境の問題や、家族の介護や健康上の理由でやむを得ず退職する場合など、正当な理由が認められた場合は、待機期間の短縮や給付金の増額が適用されることがあります。
自己都合退職と会社都合退職の違いについての説明は以下にて詳しく解説しておりますので、興味のある方はご確認ください。
【MISV】自己都合退職でも平均150万円の失業保険は受給可能!4. デジタル化の推進と手続きの簡素化
デジタル化の進展に伴い、雇用保険の手続きもオンライン化が進められています。
2024年の改正では、失業保険の申請手続きや給付金の受給手続きがより簡素化され、オンラインでの申請が可能となる範囲が拡大しました。
これにより、窓口での手続きにかかる時間や労力が削減され、受給者にとっての利便性が向上しています。
特に、マイナンバー制度との連携が強化され、本人確認や各種証明書の提出が簡素化されました。
これにより、迅速かつ確実な給付が実現され、失業中の生活を支える制度がさらに効率的に機能することが期待されています。
5. 給付額の引き上げと財源確保
2024年の雇用保険法改正では、物価上昇や生活費の増加を考慮して、失業給付の額が引き上げられました。
これにより、失業中の生活をより安定して支えることが可能となります。
特に長期失業者や高齢者の受給者に対する給付が手厚くなり、再就職までの期間をより安心して過ごすことができるようになりました。
ただし、給付額の引き上げに伴い、雇用保険料の増額も行われています。
これにより、雇用保険制度の財源を確保し、今後も安定した給付を維持することが求められています。
企業と労働者双方の負担が増えるものの、雇用保険制度の持続可能性を確保するための重要な措置とされています。
まとめ
2024年の雇用保険法等改正は、多様化する働き方や労働市場の変化に対応するために、上記内容を中心に様々な面での改善が行われました。
非正規雇用者や育児・介護を行う労働者への支援強化、離職理由に応じた給付条件の見直し、デジタル化による手続きの簡素化など、改正内容は広範囲にわたります。
これらの改正によって、失業保険の受給がより公平かつ迅速に行われ、労働者の生活を支える制度としての役割が強化されていく見込みです。
今後も、労働市場の変化に応じたさらなる制度の見直しが期待されており、最新の情報を常に把握し、適切なサポートを受けることが重要です。
そのため、失業保険の申請や受給に関してお困りの方は、専門家に相談し、最適な支援を受けることをお勧めします。